銀行に勤務のみなさん。
融資の断り方は完ぺきですか?
謝絶は銀行員の仕事の中でももっともストレスフルでもっともやりたくない場面のひとつですよね。
銀行員が取引先からの融資の相談を断ることを「謝絶」といいます。
要は「てめぇには金は貸せねぇよ、すまんな」と最後通告をする仕事です。
謝絶は100%後ろ向きの仕事で、正直いって嫌以外の何物でもありませんよね。
お金が絡むと人は変わります。
穏やかだった人が急に豹変したり、大声でどなりちらしたり、またその変化が謝絶する前は想定できないことも銀行員をより一層不安にさせます。
断り方に正解はありませんが、少なくとも一定の「型」をもっておくことで、その不安やストレスはある程度軽減できます。
この記事は現場で数多くの謝絶を経験してきた銀行員15年目のt-郎(てぃーろう)が、銀行員向けに「融資の断り方」の一定の型をお伝えすることで、謝絶に対する不安やストレスが少しでも軽減されることを願って書いたものです。
この記事では以下のことがわかるようになります。
- 謝絶の王道の断り方
- それが通用しなかった時の断り方
- それでもダメな時の番外編
- 謝絶対応時に気を付けるべきこと
謝絶は精神的に負担のかかるものですが、一定の型やフレーズを押さえておくことで、落ち着いてその場面に臨めることができます! ぜひ参考にしてみてください!
銀行員の融資の断り方の王道「総合的な判断により」
原則として、謝絶の際は「本当の理由」をはっきりとは言いません。
理由は「ダメなものはダメ」だからです。
そのため、まずは
「審査の結果、総合的な判断により、今回のご融資は見送らせていただきたいと思います」
と言って融資を断ります。
断り方に迷っていても、迷っていなくても、この言い方をしておくべきです。
それはなぜか? また、なぜ本当の理由は言わないのか?
銀行は融資を検討する際、顧客→担当→課長→次長→支店長→(場合によっては)本部、という流れで審査をする合議制です。
この審査の流れで決まったことは原則覆せません。合議による「銀行組織としての決定」であり、役職が下の者はこれに抗うことはできません(半○直樹の世界と現実は違います)。
つまり、個人だけでは覆すことができない。ダメなものはダメ、というわけです。
そして謝絶する場合、銀行サイドには明確な理由があります(顧客に言うことはありませんが)。
- 業績の改善が見込めない、債務超過の解消見込みがない
- 財務内容から返済財源が不足している
- 借入過多
- 担保が不足してる
- ネガティブ情報(延滞歴、破産歴、反社勢力とのつながり) などなど
銀行が謝絶する理由はひとつではなく、これら様々な要素が複合的に合わさっています。
そういう意味では本当に「総合的な判断」で融資をお断りしています。
また、本当の理由を「言えない」理由として、上記のネガティブ情報に該当する場合があります。
けれどそれを相手に「あなたは○社勢力なので貸せません」とはっきり伝えるわけにはいきませんよね。言ったらトラブルに発展する可能性大です。
だから、あえて謝絶の細かい理由を特定されないようにして、顧客に融資の断りをいれなければならないのです。
それゆえ「総合的な判断により~」という言い方に集約されていきます。
まずはこのフレーズを覚えておくようにしましょう。
王道の断り方以外にも「融資に関する具体的な数字を意識させる」方法
銀行員は謝絶の理由をはっきり言わないのが原則ですが、顧客との関係性や案件によってはある程度数字を基にした説明を付け加える場合があります。
- (不動産融資の場合)建物が法定耐用年数を超過している
- 売上を超える借入がある
- 年間の約定弁済金額に対して、返済原資(キャッシュフロー)が不足している などなど
特に不動産融資などでは、物件の状態(築古、割高、立地など)を理由に謝絶することも多く、今後改めて相談に乗ることが可能な場合には、より具体的な数値や条件を顧客に伝えて理解を得られやすくすることがあります。
銀行員が融資を断る際に気を付けておくこと
身だしなみは整える。ネクタイは暗めの無地がベスト
謝絶に臨む際はまず身だしなみを整えます。
理由は、相手に隙を与えないためです。まず第一印象の段階でマイナスだと、その後の大事な謝絶の話も相手にきちんと伝わらない可能性があります。
顧客の会社へ訪問する際のマナーも同様です。気になることがあれば事前に調べておくべきです。
そうしたネガティブな可能性をひとつずつ潰しておくのも謝絶の際には必要になってきます。
話す内容をまとめて、頭の中でいいので予行練習をしておく
謝絶に慣れていない時ほど、一度でいいので事前に話す内容や流れを反芻しておくことをおすすめします。
ただし、謝絶が想定通りの会話で終わることはまずありません。
そのうえで説明の流れや要点については事前に頭の中で固めておくことで、想定外の状況になっても、自分自身の軸をブラさずに対応できるはずです。
何ごとも事前準備が大事ですよね。
謝絶は担当のせいではない
いかがでしょうか?
最後に改めてお伝えしたいのは、「謝絶は担当者のせいではない」ということです。
融資に取り組む場合、融資の相談を受けた担当者、謝絶に行ってトラブルになった担当者、顧客との最前線にいる担当者が必ずと言っていいほど火の粉をかぶります。
けれど、謝絶になったとしてもそれは「銀行としての組織決定」であり、担当者のせいではないということです。
担当者はあくまで相談を受けた融資案件に真摯取り組み、上席を説得できる材料を考え、顧客ともすり合わせをしていく。
それ以外にできることはありませんし、逆に言えば、そこまでが担当の仕事とも言えます。最終的な判断をするのは上司や本部の責任です。
だから、担当者が謝絶することに対してなるべく苦しまないでほしい。
この記事で紹介した「断り方の型」を使って、少しでもそうあってほしいと願っています。